あくまくんが愛してやまない。
あくまくん抱きしめてください
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旧校舎を、黙って歩く。
ふたりしてコスプレをしているおかげで、緊張感がどこか薄れてしまう。
ただ、ギャラリーの視線から免れて、心なしかほっとした。
たどり着いたのは、大きな掲示板の前。
以前恭平くんが貼ってくれたポスターは、いつのまにか剥がされていた。
時の流れを感じたけれど、まだわたしたちはなにも始まっていないことに気づく。
そうしてふたりとも立ち止まり、恭平くんはわたしに向き直った。
いつもセンター分けの髪の毛をオールバックにセットしていて、綺麗な瞳がよく見える。
恐ろしく麗しい彼が、わたしの瞳を絡め取る。
「……みゆうちゃん、ごめん」
突如 恭平くんは頭を下げた。
予想外の展開に、驚いて慌てて駆け寄る。