あくまくんが愛してやまない。
「好きだった」
真っ直ぐわたしに向けられた言葉。
受け取れないけれど、彼の気持ちは、心の奥に大事にしまっておこうと思う。
過去形になったのは、きっと、わたしのための気遣いだ。
そういう優しさが、沢っちらしかった。
「うん……、ありがとう。沢っち」
「……おう。シフトは気にせず行ってこい」
くるりと踵を返して仕事に戻る沢っち。
その背中を眺めながら、もう一度心の中で感謝を伝える。
すると、視線を感じて見上げると、恭平くんがわたしをじっと見ていて。
「話そうか」
緊張しながら、その問いかけにうなずいた。
教室廊下ともに視線を浴び、わたしたちは向かう。
────あの日わたしたちの関係がはじまった、旧校舎に。