2ねんせいの夏。
その日、空は本当に青く、

屋上は本当に暑かったけど、

貴が貴でよかったと、
父さんが父さんでよかったと
思える時間がそこにはあった。

屋上の扉の裏では、宏が親子の会話を立ち聞きしていたが、いつのまにか居なくなっていた。

澤田親子が屋上を後にし、
一階に戻ると、
健と潤がホームの散歩から帰っていた。

潤の手には一匹の蝉。

貴と父は声をそろえて言った。

『“逃がしてあげなさい。”』

その後、その場で蝉を手から放した潤のせいで、
家の中で飛び回る蝉を追いかけて、
結局室内蝉採りをする羽目になった貴と父。

宏は笑って手伝わない。

貴と父、潤と健の蝉採りは、その後一時間ほど続いて、窓の隙間から蝉が逃げたことによって幕を閉じた。
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