2ねんせいの夏。
『もう泣かないでよ。
飴、あげるから。』

遼が言った言葉は、
小さかった修をなぐさめる、
死んだ兄の言葉と同じだった。

死んだ兄と同じ歳になった弟に
なぐさめられながら、修は思った。

いつのまにか、
自分は兄の歳をこえて体だけ
大きくなって。

弟になぐさめられながら、
自分の中に住む大きくならない、
でも、いつまでも変わらない兄に問う。


“お兄ちゃんってこんな気持ちなのかなぁ…”


実家に帰るのをやめ、
部屋に向かう修は、

『おいで、明日帰ろう。』

遼を部屋に泊める事にして、

この家の人達に許可を貰って。

実家に電話して。

『明日、二人で帰るよ。』

電話の向こうの両親の声は

とてもうれしそうで。

その夜、修は、
貴、宏、春、太陽に言った。

『残りの夏休みは
実家で過ごそうかと思って。』

『いいんじゃない?』

『うん、いいと思う。』

『たまに遊びにくれば?遼君と。』

『そうするよ。』

『俺も一週間くらい帰ろうかなぁ。』

春が言った。

『おばさん一人なんだし
帰ってやれよ。』

『そうだ。』
『そうだ。』
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