彫刻
黒川は突き当たりのお手洗いを一通り覗いた後、2階へ上がった。こちら側からだと例の教室は最後になる。

2階の廊下は、やけにきしんだ。踏み抜きはしないかとひやひやしながらひとつひとつ教室を覗いて回る。

教室の数はそんなに多くなく、林の姿はすぐ見えるはずだったが、なぜか彼の気配がない。結局、例の教室へは黒川のほうが先に着いてしまった。外で用でも足しているのだろうか。

教室の窓から外を見渡した。軽トラックを停めた場所もよく見えたが、林の姿はどこにも見当たらない。

もう日没は近く、薄暗くなりはじめた。目の前の霊峰はもうすっかり夕日に染まっていた。

ギュィ~ッ、ギュィッ、ギュィ~ッ、ギュィッ

突然、背後からきしむ音が聞こえてきた。

「林さん、遅かったですね。誰かいたんですか?」

振り返って黒川は凍りついた。てっきり林だと思っていたが、そこに立っていたのは異様な姿をした男の子だったのだ。
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