彫刻
蓑虫
話し込んでいるうちに、ふたりはいつの間にか小学校裏の軽トラックのところまで戻って来ていた。

「あれ?今なにか動いたぞ」

林が学校の教室でなにか見たらしい。2階の教室をずっと気にしている。

「どうしました?学校に誰かいたんですか?」

「2階の教室の窓のところを、緑色の物が横切ったように見えたんですが、気のせいかな?いや、確かに見えたがなぁ・・・」

「今は誰もいないはずですよねぇ、確かめてみましょうか」

ふたりは校舎の中に入り、1階からひとつひとつ教室の中を覗いて回った。

「過疎化のせいで10年程前に廃校になりましてね、それからほったらかしなんです。こんな田舎じゃ土地の買い手もつかないし、取り壊すといってもそれなりに費用がかかりますからねぇ、それに」

「それに?他になにかあるんですか?」

「ちょうどその頃、このあたりに蓑虫が異常発生しましてね。誰が言い出したのか、この学校になにか怨念があるんじゃないかって、変なうわさがたっちゃって、よけいに評判を落としたらしいです」

「ああ、知ってます。たぶん誰かが面白半分に雑誌社へ投稿して、おもしろそうだからって大げさな記事にしちゃたんじゃないですかねぇ」

古いおかしの袋やビールの空き缶がところどころに散乱している。心霊スポットとして紹介された場所では、よく見る光景である。

「1階は誰もいませんねぇ、わたし反対側の階段から2階を見ていきますよ。上でおちあいましょう」

林はそう告げて反対側へ戻って行った。
< 21 / 43 >

この作品をシェア

pagetop