Contact〜再会した初恋の君に〜

side 宏和


大学の時にお世話になった教授が急に東京に来たと連絡があり、大学の同級生でもある金田麻帆と一緒に会いに行った。

今日は紗希との約束があったのだが教授の都合の良い日が他になく、紗希には申し訳なかったが急遽予定を変更してもらった。

「後で連絡して謝らないとな」と、私服に着替えて病院を出る時はそう軽く考えていた。

それより麻帆が俺の腕に腕を絡めてくるのに困っていた。

麻帆との付き合いはそれなりに長くて、彼女のことはよくわかっているつもりだ。

昔からこうやってよく俺に絡んできていたが、お互いに恋愛感情を持ったことなどない。

「麻帆。俺から離れろ」

「なんで? いいじゃない」

「よくない。こんなところを誰か知り合いにでも見られたら困る」

「別に見られたっていいでしょ。私と宏和くんの仲なんだから」

「だから、そうじゃなくて。ちゃんと離れて歩けって」

何を言っても何度言ってもこちらの言うことを聞かない自分勝手なところは、子どもの頃から変わっていないなと呆れていた。

結局、俺は絡まれた腕を無理に振りほどくことは諦めて、駅まで一緒に歩いた。電車の中でもやたらと体を近づけてくる麻帆に何度か離れるように注意はしたが、改められる様子がなく俺は自分の手の置き場に困るほどだった。

教授との食事中も彼女気取りの麻帆に呆れたが、ここで強く否定してこの場の空気を悪くすることは避けた。
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