Contact〜再会した初恋の君に〜
「紗希!」
自分の名前を呼ばれた方に視線を向けると、そこには白衣を着ていない宏和が軽く息を切らせた状態で近寄ってきた。
「紗希、やっと会えた」
宏和は私たちの前に来たと思ったら、私の手を引き、立ち上がらせ背中に隠す。
坂口先輩も立ち上がり三人の間に気まずい空気が流れる。
坂口先輩が宏和に対して先に口を開いた。
「君は誰だい? 今は僕が彼女と話しているんだけど」
今まで聞いたことがないような先輩の声色に焦りを感じ、お互いを睨みあう二人の間に割って入ろうと宏和の後ろから出て声を上げる。
「坂口先輩、落ち着いてください。宏和もいきなり失礼じゃない?」
「紗希ちゃん。僕は落ち着いているし大丈夫だよ。それより、そこの君は噂の彼かな?」
「噂って。何を聞いたか知らないが、俺の紗希に何してやがる」
宏和が再び私の腕を掴み自分の体の後ろに私を隠すと坂口先輩と向かい合い、こちらも今まで聞いたことがないほどの低い声で言った。
「ふうん…俺の…ね。でも、君は他の女性とも付き合っているんだろう? 紗希は君に二股かけられていることで苦しんでる。苦しめるようなことをする奴から、僕が守ってあげようと思ってね」
「はあ!? 誰が二股かけたって言うんだよ。何も知らない奴が余計なことを言わないでくれ」