【短】だからもう、俺にちょうだいって。
「あっ、このみちゃん偶然!たまたま通りかかったらすごい場面に遭遇しちゃったみたいだよ俺」
だって逆チョコ貰ってんだもん。
オッシャレ~、なにそれ手作り?
意識たっかあ、やっばあ、いいの俺。
そんな場面を盗み見ちゃっていいのかよ俺ラッキーボーイじゃん。
───なんて、止まることを知らない結多くんは超加速。
「ゆ、結多くん…」
「うん結多くんです。より多くの縁を結べるようにって由来を持ってたりして。でも困るのは“ゆうた”ってよく間違えられること。
“ゆうた”じゃないから、俺、“ゆいた”だから。常にふりがな必須案件、はっはっはっ」
すごい喋ってる…、
急に自己紹介を始めちゃってる…。
でも笑っているようでまったく笑ってない……。
「そんな俺がこのみちゃんの彼氏の結多くんです。そうそう彼氏なの俺、彼氏なんだよ俺は。……なあ、後輩くん」
そして冷めきった表情と怒りで狂いそうな何かを持ち合わせた眼差しが、スッと黒田くんへと。
「……どうも」
「いや“どうも”じゃねえわ。どんな気持ちで挨拶してんだよ後輩め」
「…し、失礼します」