【短】だからもう、俺にちょうだいって。




とてつもない気迫負けをしてしまったのか、黒田くんは逃げるように早足で消えていった。


すごく重い空気……。

結多くん、怒ってる…?
それか落ち込んでる…?



「こ、これはね…?黒田くんはお菓子づくりが得意みたいで、だからくれただけだと思う…の」



顔を伏せているから、どんな表情をしているか分からない。

手持ちぶさたになってぎゅっと握ると、手にした小袋がカサッと音を出しては余計にズドンと重い空気に。



「燃やす、これはもう燃やすしかねえ。チョコを?ちげえわあいつ本体をだわ」



ぶつぶつとつぶやきながらも、準備室のドアをスライドさせて鍵まで閉められてしまった。



「え、なんで俺こーいうときに魔法使えないの?手から火とか出ないの?どうなってんだよ俺の手は。……俺の手は!!」


「………」



そして現実逃避に走ろうとしている結多くん。


ここにきて私は冷静に考えちゃったのだけど、たとえ後輩だとしても男の子から貰ってしまったプレゼントなのだから。

彼氏である彼が複雑に思うことは当たり前だ。



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