あさまだき日向葵
……夜明けだ。オレンジの光が白っぽく上がる。チラチラ波が反射して海も赤い。

「……綺麗。朝日って」
「うん、アガる」
「……情緒のない言い方!」
「じゃあ、ノボる」
「そのまんま!」

二人で手を繋いで、ぶらぶら。

「そのリュック、今日も四次元ポケット?」
「そ。聡子、1回くらいは転けるだろ?」
「転けないし!」

って、言ってたら転けた。けど、塔ヶ崎くんも転けた。
自棄になって、二人でそこに腰を下ろした。
「あーあ、敷くの持ってきたのに、いいや、もう」
「だね」

波が白い。海がいつのまか青くなっていた。
「ほら、さざ波、俺の色」
「あはは! 確かにね。塔ヶ崎くん透明感あるし」
「聡子も今日は水色~」

と、言ったまま黙ってしまった。じっと見てくる顔に、首を傾げた。
「どうしたの?」
「それ、前に塾でも着てたな」
「うん、着てたね?」

だから、どうしたんだろう。あの塔ヶ崎くんが迎えに来てくれた日、だよね。

「ずっと、もやもやしてた。俺と会う時より可愛い気がして」
「……これ着てた日、塔ヶ崎くんと会ったよね?」

塔ヶ崎くんがばつの悪そうな顔で視線を外す。もう一度こっちを見ると、自分の前髪を梳いた。少し残る青が、ふわり見えた。
綺麗でまた、目が釘付けになってしまう。

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