あさまだき日向葵
──早朝、まだ暗い時間に起きた。さすがに海っていっても明日から9月に入る今の時期に泳いだりしないし、くらげがいそう。それに水着はないけれど……。

あの水色のワンピースを着て、前髪もちゃんとセットした。
全然明るくならないまだまだ暗い時間に出発した。駅にはもう人がちらほら。

「おはよう」
って、挨拶を交わすと
「逆に朝帰りみたいだな」って笑い合った。
ちょっと家出みたいにも見える。

電車でどちらからともなく寄り添って、体が触れてる方の手を繋ぐ。
チラリ見ると、塔ヶ崎くんもこっちを見ていて笑ってくれた。胸がドキドキして緊張、しちゃう。それ以上に幸せだ、すでに。

電車の窓から見える、真っ暗な外が薄く明るくなってくる頃、海に到着した。地平線がぼんやり、朝日で赤い。

静かな静かな場所。波の音だけが聞こえる。空気が澄んでる気がする。
夏とは違う、そんな空気を胸いっぱいに吸い込んだ。

「全然人がいないんだね」
「そうだな、夜の方がいるのかもね」

私たちは、そこで足を止めた。
空が明るくなっていく。
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