あさまだき日向葵
「微生物、大活躍だ」
「……そうだな」

「それより、(せん)……お前、佐鳥さんとペアなんだからな。あまり、困らせるなよ」

そう言うと、そのまま背を向けた。
非常に心外だが……昂良に心配されるだなんて。だけど、昂良が心配するレベルに……俺と佐鳥聡子とのペアは微妙。
微妙っつーか、あからさまに嫌な顔してたな、佐鳥……。

全然思う通りにならなかったわけだし、失敗じゃねえか、この思い出企画。
わかってるのに、止めようと誰も言い出さないのはそれぞれにそれぞれがどこかの方向へ気を遣ってるからなんだろうなあ。
それと、これから始まる進学への漠然として不安とずっと高校生でいたいような、それでいていられない不満の中で、せめて一つの思い出くらいは……そう思う気持ちが留まらせるのか。
……俺も人のこと心配してる場合じゃなかったな。

楽しむか、夏休み。

家に帰ると、玄関まで猫のパーシモンがお出迎えに来る。こうやって愛想がいいのはこいつとフェニックスくらい……


「あれ、フェニックスは?」
花瓶の茶色くなった葉を取り除いていた祖母に声をかけた。
「ああ、お帰り。また調子が良くなくて、獣医さんのところ」
「ただいま。そっか」
「後で迎えに行ってくれる?」
「わかった」

「ただいま、トマト、プチ、プラム」
それぞれ、ちょっと顔をあげると、また寝てしまった。
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