あさまだき日向葵

「しばらくは消化のいいものをあげるようにして」
何とも情けない顔をして俺に張り付いたフェニックスを、キャリーに収めると、顔だけは出せるようにしてやった。
髪の色が気になるのか、カラー剤の匂いが気に入らないのか、じっと見ては鼻をひくひくさせてる。

一括でフェニックスの容態を家族に連絡すると
『病院でおすすめのフード聞いてくるように』と、指示され、もう一度病院へと戻るとそこで販売されてたものを数点購入した。

暑いのにキャリーの中じゃ余計暑いだろうと、帰り道を急ぐ。

家に着くと、留守番していた猫たちが寄ってくる。フェニックスには吐いてもいいようにベッドのバスタオルの上にシートを乗せたが、シートが気に入らないようで抗議され、まあ、いいかとシートを取り除いた。

『飯』とメッセージを送ると
『いる』とか『いらない』とか返信があって、みんな自由だ。『いる』の数を数えて冷蔵庫を開けた。

いつものルーティン。俺が『いる』か『いらない』か送る側の日もある。

「何だこれ……」
冷蔵庫の中に入ってたジュースらしきものをコップに注いで一口。
うぇ、うっすい味。メープルウォーター？メープルシロップの甘味も香りもしない。

……よくわからない。どーせ、ねーちゃんか母親。バタンと冷蔵庫を閉めた。