あさまだき日向葵
人を好きになるということは、自分を意識するということなのだと、初めて知った。
自分が、人からどう思われ、どう見られるのか。特に……塔ヶ崎くんが私を見てどう思うか、それが気にかかって仕方がない。

何の変哲もないこの髪型とか、服装とか、指先のちょっとしたささくれさえ、恥ずかしい。……そんなの、塔ヶ崎くんは見ていないだろうけど……。

「保育園以来ね」
母親が、そう言って笑った。

「何それ」
「聡子、保育園に着ていく服、すっごいこだわってていつも同じのしか着てくれないし、大変だった」
「……何の話?」
「髪型とか、服とか、気にしだしたから。珍しいなと思って。年頃になったのね」

バレてるのかと、チラリと母親の顔を見たけれど、深い意味はなさそうで、ほっとした。

「全然、そんなのに興味ないのかと思って心配してたのよ。彼氏の一人や二人、連れ来たっていい頃なのにって。ほっとしたわ」

……深い、意味でした。バレてました。
「……いいの?」
「何がよ、そりゃあ心配はするけど、楽しんで」
「……うん。はい。あ、お母さん服も見てもいい?」
そう言うと

「ボーナス入ったの、知ってるのね?」
と、苦笑いされたけれど、嬉しそうに買い物に付き合ってくれた。

選んだのは、淡い水色のワンピース。
何か青系ばっかり、選んでいる気がする……。

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