“甘さ”に“苦さ”は混ざれない
私はチョコレートが苦手だ。
嫌いでは無い、苦手なのだ。
カカオの香りはとても好きだし、舌触りも滑らかで好き。
「じゃあなんで苦手なの?」
友達に話すと必ずそう聞かれる。
当たり前だ。私の感想は一般的にチョコレートが好きな人が口にする感想だ。
「何となく苦手なの。」
そう答えると友達はそっかーと言い深くは聞いてくることも無い。
“なんで苦手”…か。そんなの決まりきってる。
「おはよう綾瀬!」
「梨花ちゃんおはよう。」
あぁ…これだ。
「おはよう。南、沙耶。」
まるでカカオ100%のチョコレートを一気に摂取したかのような、どろどろとした苦いものが私を埋め尽くす。
「相変わらず仲良いね〜!」
一気に広がったチョコレートに誰も気づくことはなく、周りは今にも口笛を吹きそうな勢いで2人を冷やかす。
途端に2人の顔が赤く染まり、まるでミルクチョコレートを塗りたくったような甘い雰囲気が立ち込める。
私とは真反対。甘さなんて知らなければチョコレートの苦さになんて気が付かなかったのに。
嫌いになりたいのに、1度味わったらもう忘れられない。
だから今日も私は、
「…ほんとに!毎日甘いね〜。」

チョコレートが苦手だ。
< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop