公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「いや、おれが不躾だった。人の気配がしたので、おもわず見上げてしまった」

 彼は、そう言うとあらぬ方向へ銀仮面を向けた。

「いえ、いいのです。それよりも、なにをなさっていたのですか?」

 こんなに朝早く、庭を散策?

「ああ。素振りをしてから、そこの花壇の花の手入れを」

 彼は、すぐ近くにある楡の木の方を向いた。

 気がつかなかった。彼の物らしい大剣が幹に立てかけられている。

 そして彼は、右手にある花壇の方へと銀仮面を向けた。

 花壇に青紫色の可愛らしい花が咲き誇っている。
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