公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「うわあっ! 公爵閣下、サイネリアですね。きれいだわ」

 彼との会話の途中、視界の隅に青紫色の絨毯が映った。そちらへ視線を向けると、左側にサイネリアの花が永遠と思えるほど広がっている。

 冬がやって来る直前の穏やかな日、青紫色の絨毯は陽光に照らしだされてキラキラ光っている。

「すでにこの辺りはファース王国軍の駐屯地だ。このサイネリア畑は、民間人に開放している。他国からも見物に来るほど有名なのだ」
「すみません。王都で生まれ育っているはずなのに、まったく知りませんでした」
「いや、気にするな。だれもかれもが知っているわけではないからな。屋台が出ていたり大道芸が行われていて、けっこう賑わうのだ」
「楽しそうですね。きれいなサイネリア畑を見ながら、美味しいものを食べる。最高です」

 脳内でその光景を思い浮かべてみた。

 屋台ってどんな屋台なのかしら?

 スイーツや果物や揚げパンやサンドイッチやロースト肉やパスタ……。
< 150 / 356 >

この作品をシェア

pagetop