公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね
「その結果がぼくですから。誇張やごまかしはあっても、まったくの嘘ではないと思います」

 イーサンは、あのボスがグッドフェロー侯爵家のご令嬢と恋仲になるなどという美談を信じているわけね。
 だったら、赤の他人のわたしが否定したり非難するわけにはいかないわよね。

 ということにしておきましょう。

 それで、つぎは彼のパートナーのことね。

「じつは、わたしは先代のラプキン伯爵の娘なのです。正妻である母がはやくに亡くなり、父は愛人だったレディを後妻に迎えました。父は正妻である母が亡くなるずっと以前から浮気をしたいましたので、わたしよりも年長の娘がいたのです。小説によく登場するように、後妻とその娘、つまり義姉に虐められ、挙句の果てにラプキン伯爵家を追いだされてしまいました」

 美貌ににこやかな表情を浮かべてハードな幼少期を語り始めたのは、わたしの前に座っているジリアンである。

 亡くなった姉よりある意味ではずっとずっときれいな彼女が着飾り、イーサンにエスコートしてもらってウインズレット公爵家のエントランスに現れたときには驚いた。
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