公爵閣下、あなたが亡妻を愛し続けるので後妻の私を愛せないというならお好きなようになさったらいいですわ。ただし、言行不一致で私を溺愛するなんてことは勘弁して下さいね

昔の職場

「何でも屋」の経営者でありわたしのボスは、アイヴァン・プラットという五十代後半のハゲ親父である。

 こんなことを言ったら、頭をどやされてしまうけど。

 デリカシーにかけるところはあるけど、面倒見のいい頼れる親父。それが、彼である。

 小太りで小さな丸メガネをかけている。いつもヨレヨレでシミのついている白色のシャツを着用し、ヨレヨレのズボンをサスペンダーで吊ってはいている。お腹が酒樽のようにでっぱっていて、昔は美貌だったらしい顔は、いまでは下膨れになっている。

 バイオレンス系やミステリー系に出てくる探偵を地でいっているのが彼というわけね。

 わたしが仕事を探しているとき、たまたま彼と出会った。その出会いは、偶然にしては運命的だった。だから、いまでは必然だったと思っている。
< 52 / 356 >

この作品をシェア

pagetop