さよなら、真夏のメランコリー

三 ちっぽけな私たち

しんしんと雪が降り始めた公園は、とても静かだった。
輝先輩は私の手から傘を抜き取り、肩を寄せ合うようにして座り直した。


「俺の足のこと、ちゃんと話したことなかったよな」

「うん……」


今まで、自分からは訊けなかった。
自分が水泳について触れられたくないからこそ、自分からは彼に陸上のことは訊かないと決めていたから。


「俺、一年のインハイの直後、練習中に右膝の靭帯を断裂したんだ」

「靭帯?」

「うん。脱臼して、靭帯が切れた。別にそれ自体は全然珍しいことじゃないし、陸上選手以外にもスポーツ選手なら結構経験してる人はいる」


私は静かに相槌を打ち、ただ話を聞くことに徹した。


「通常はさ、膝の靭帯が断裂したら、固定して周辺の組織がくっつくのを待つか、もしくは靭帯の再建手術をしてリハビリをするか、なんだって」


前者は、普段スポーツをしなかったり、手術しない方がいい事情があったり。もしくは、日常生活に差し障りがなさそうだったり。
そういう人が手術はせずに膝の周辺を固定してやり過ごし、ある程度の期間が経つのを待つのだとか。


靭帯は断裂したままだけれど、激しいスポーツをするわけじゃないなら基本的には差し支えはないらしい。

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