さよなら、真夏のメランコリー
(親友より一緒にいるって……おかしい気もするんだけどね)


自動販売機でコーラを買い、自分の分も購入しようとしたところで、後ろからお金を入れられた。


「え、なに?」

「どれがいいの?」

「……ピーチティーだけど」


輝先輩はピーチティーのボタンを押すと、「ん」とペットボトルを差し出した。


「これは俺の奢り」

「それ、勝負の意味あった?」

「美波と一緒にいると楽しいからいいんだよ」


笑顔でそんな風に言われて、胸の奥がむずがゆくなる。


「ごち」


ピーチティーの代わりにコーラを受け取った彼は、ペットボトルの蓋を開けると、おいしそうにグビグビ飲んだ。


「……ありがとう」


私は、なんだかソワソワして落ち着かない心を隠し、視線を逸らす。
よく飲んでいるはずのピーチティーが、今日は普段よりも甘く感じた。


「そろそろ行くか」

「うーん……」

「さっさと課題終わらせて、後半はひたすら遊ぶんだろ?」

「そうだけど……いまいち気分が乗らないっていうか……」

「でも、美波はバイトがある日は『課題できなかった』って言うじゃん」

「それは……だって、まだバイトに慣れてないし」

「だから、これから一緒にやるんだよ」


ため息を漏らしながらも、小さく頷く。

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