彼の素顔は甘くて危険すぎる

こんなことされたら、ますます惚れるじゃん。

俺の隣でソファーに座る彼女は、ネイル道具を片付け始めた。
俺のことを何とも思ってなかったらしないはず。
多少の好意はあるにせよ、好きでもない男と揃いのネイルにはしないと思うから。

まだもう少し先かと思ってたけど、もしかしたら彼女の気持ちが俺へと向いたように感じる。
ダメでも今まで通りアプローチし続ければ済むことだし。

こんな風にされたら、淡い期待が色濃くなったと勘違いする。
それが勘違いで無いことを祈りつつ、彼女が片付け終わったのを見届け、声をかける。

「俺のこと、好き?」
「っ……」

反応はまずまず。
リュックのファスナーにかけた手が止まってる。
ここまでしておいて、嫌いだとは言わせねぇ。

彼女の手首を掴み、俺の方に体を向けさせる。
自然と絡まる視線。
結構満足のいく表情をしてる。

だって、彼女の瞳が『好き』って言ってるもん。

そのままソファーにそっと押し倒す。
嫌がる素振りを見せないところをみると、俺の勘は的中してるっぽい。
それでも、俺との温度差があるから……。

ゆっくり覆いかぶさるように近づく。
もっと近くで彼女の顔が見たいから。

この照れてる顔も。
俺を意識してぎゅっと握られる手も。
緊張して不規則になる呼吸も肌で感じる為に……。

「ひまり」
「……っ」

緊張して息を止めたのすら手に取るように分かる。
それが堪らなく嬉しくて。
数か月前なら、体が軽く拒否ってたのに。

「好き?」

真っすぐ見つめて囁く。
だって、一方通行じゃ意味ないじゃん。

黙ってじっと見つめていると、僅かに小さく頷いた。

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