彼の素顔は甘くて危険すぎる

(ひまり視点)

「好き?」

ソファーに押し倒されて、痺れるような甘い声が降って来た。
もうだいぶ前から自覚してる。
彼のことを好きだって。

彼に触れられることも、囁かれることも。
前の私なら驚いて距離を取ってたのに。
今はもっと見つめて欲しいし、囁いて欲しいと思うほど……。
それに、こんな風に触れられたら、遊びや揶揄いでしてるんじゃないと思えるから。

手首を掴んでいた彼の指先は、這うように私の指先へと移動して。
私の気持ちを確かめるかのように指先が絡まり合う。

両手を完全に塞がれてるのに、とてつもなく幸せを感じるくらいだから。
指先まで彼を求めてる自分がいる。

彼の『好き?』の言葉に、初めて自分の気持ちを表した。
だって、今日は彼の誕生日だから。
嘘は吐きたくない。

私の頷きに満足した彼は、優しく唇を重ねた。
甘く蕩けるようなキス。
今まで何回もしてるはずなのに。
今日のキスが一番甘く感じる。

想いが通じたからなのかな。

角度を変え、何度も啄められて呼吸が上手く出来ない。
だけど、それすらも幸せで。
ソファーに張り付けられてる指先でさえ、彼をもっと感じたいと握り返してしまう。

指先から頬に移動した彼の手。
壊れ物を扱うみたいにそっと優しく包み込む。

「んっ……ッ……」
「……平気か?」

不慣れなキスで呼吸が乱れる私を優しく気遣う彼。
鋭く獰猛な黒豹みたいな視線の時とは違って、初めて会った時のイケメン王子様と同じように。

優しく髪を撫でられる心地よさ。
お団子ヘアーでは味わえない特別な感覚。

ぎゅっと瞑っていた瞼をゆっくりと押し上げると。

「この先も……していいの?」
「………ふぇっ?」

何やら、超特大な爆弾発言が投下された。

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