彼の素顔は甘くて危険すぎる
彼氏以外の人から壁ドン?!

4月8日始業式。
校庭に植わるシンボル樹のソメイヨシノが優しく微笑む。
真新しい制服を身に纏った生徒たちを迎えるかのように、そよ風が花の甘い香りを運んでくる。

正面玄関の入口に張り出された貼り紙を目にして、ひまりと不破は言葉を失っていた。

「不破……くん」
「……ん」

不破は3年A組、ひまりは3年D組。
別々のクラスになってしまった。
しかも、A組からC組は南校舎、D組とF組は西校舎と校舎まで別々という運の無さ。

新1年生の保護者もいるため玄関前は混雑し、雑踏に紛れるように不破はひまりの手を握りしめていた。

いつもは他の生徒より早く登校する2人だが、この日ばかりはクラス編成の貼り紙がまだ貼られておらず、貼りだされるのを待っていたのだ。

「不破くん、行こう?」
「……ん」

新年度を迎え、心がワクワクするはずのこの日。
2人の間には、一気に冬に戻ったようなそんな冷たい風が吹いているようだ。

足取りが重い。
玄関から3階へと上がる階段も本来なら別々の方角に行かねばならないのに、不破はひまりの手を離せず、ひまりの教室がある西校舎の階段を上がる。

「終わったら、連絡して」
「うん」

3階まで上がった2人は、渡り廊下の端で見つめ合う。
今生の別れでもないのに、離れがたいと言わんばかりの表情で。
すると、予鈴が響き渡る。
不破はひまりの頭を優しくポンポンと撫でて、南校舎へとその場を後にした。

**

放課後。
半日で下校した2人は不破の自宅に程近いファストフード店で昼食を済ませ、不破の自宅へと向かう。
マンションのエントランスをくぐり、エレベーターに乗り込んだ、次の瞬間。

「んッ……」

ひまりは不破の長い腕に抱き締めれらた。

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