彼の素顔は甘くて危険すぎる

**

「どこ行こうか」

久々に手を繋いでデートをする。
普段からあまり出たがらない彼だけど、GWということもあるし、半月以上デートしてなかったから。
ぎゅっと繋がれる手が嬉しくて。

「さっきので良かったのか?」
「うん!!」

駅のホームで電車を待つ間、隣の彼をじっと見つめる。

スマホに彼の連絡先を再登録して、アラーム音を彼のボイスで登録した。
これで明日から毎日甘い声で起こして貰える。

それに……。
写真や動画を移行してしまったから、新たに沢山写真を撮ろうということになって。
今、私たちはデートをしている。

「不破くんって、どういう時に曲が思い浮かぶの?」
「どういう時って、……突然降って来る的な?」
「……やっぱり、天才肌なんだ」

外で彼と話す時は『SëI』とは言わないようにしている。
誰が聞いているか分からないし。
同じ過ちは繰り返したくない。

降って来る。
やはり、創作活動ってそういうものなんだろうなぁ。

何もない所から紡ぎ出す能力。
私には無い。

「ひまりもそうなんじゃねぇの?」
「私は違う……かな」
「そうなの?」
「……うん」

私は見たものをそのままに捉えて描くだけ。
如何にリアルに描けるか、それに尽きる。

抽象的なものを描く場合に、イメージを表現することもあるけど。
やっぱり、表現力が足りないせいか、難しい。

「ゼロから紡ぎ出すのと違って、ある物をありのままに描く違いだと思うけど」
「あぁ、なるほど」

言葉で表現するのは難しいけれど、多分これが今一番の悩み。
無いものを描くための感性を培いたい。

< 180 / 299 >

この作品をシェア

pagetop