彼の素顔は甘くて危険すぎる

「もっと踏み込んだ質問しなくて平気?」
「……というと?」
「どれくらい貰えるか?とか、いつ貰えますか?とか」
「………気にはなるけど」

聞きたいけど、言い出し難い。
両親がこの場にいたら、たぶん突っ込んで質問してると思う、母親が。

「仮契約のうちは、それほど多くの作品を扱うこともないと思うんだけど、それでも既に発生してる分があるからね。それはちきちんと支払います。金額で言うのは難しいんだけど、枚数や使用状態や使用目的にもよるかな」
「……使用状態?」
「例えば、クロッキー画だったっか?一枚の紙に幾つも描かれたやつ」
「はい」

不破くんが社長に見せたのだろう。
二人で会話している。

「あの状態で曲を仕上げるのと、1枚の水彩画をコンセプトに1曲を作り上げるのとは多少金額が違って来るってことを理解した上で」
「……はい」
「数万円から数十万程度を設定してるけど、例えば、不破がこの絵をジャケットの表紙にしたいと希望した場合、改めて本作品として描き上げた上での金額となれば、百万以上は1点当たりで支払うことになると思います」
「………えっ」

怖い怖い怖い。
これって詐欺じゃないの?
題材をモチーフに描いた絵なんて、自由に描いてと言われて描いたから。
ものの数分から数時間で仕上げたものばかり。
それが、百万以上って……。

「今、頭の中で時給計算してるだろ」
「……うん、怖すぎる」
「フフッ」
「いやぁ、ひまりちゃん、ホントに面白い子だね」
「仮契約のうちはバイト感覚でいいから。まぁ、時給計算出来ないくらいの稼ぎだってことだよ」

彼の愛情は底知れないほど、……深いらしい。

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