彼の素顔は甘くて危険すぎる

(ひまり視点)

不破くんの自宅で合格祝いのミニパーティーをした夜。
彼は自宅へと送り届ける為に上着を羽織った。
そんな彼に爆弾を投下する。

『今日、お泊りさせね?』

口から心臓が飛び出るほど緊張しながら。
合格発表を自分の眼で確かめてから、ずっと心が浮ついていて。

美大で合流した麻友ちゃんと話がついている。

麻友ちゃん家族は合格発表を見届けて、その足で沖縄旅行へと向かった。
私は事前に麻友ちゃんに相談していて、『合格したら麻友ちゃんちに泊まりに行くってことにしてね?』と口裏を合わせてある。

以前に、麻友ちゃんからも同じようなお願い事をされてるから、麻友ちゃんも一つ返事で快諾してくれて。
そんな私は大胆にも、両親に嘘を吐いて彼の家にお泊り計画を立てていた。

6歳上の兄は、高校時代からしょっちゅう外泊していたこともあり、『外泊』自体に抵抗のない両親。
夏休みに不破くんのご実家に泊まりに行ったこともあるから、正直に話しても良さそうなものだけど。
さすがに一人暮らし状態のマンションに、とは言いづらくて。

バレたらバレたで話すつもりだけど。
ピアスホールを開けたことによる、人生への向き方が大胆になったというか。
美大合格が背中を押したというか。

とにかく、普段じゃ出来ないことも今ならちょっと冒険出来る、そんな高揚感に浸っていた。

「本気で泊まる気?」
「……ん」
「今ならまだ間に合うぞ?」
「………」
「覚悟は出来てんだろうな……?」
「……ん」

覚悟はとうに出来ている。
行動に移せなかっただけで。

この機会を逃したら、次はいつ勇気が出せるか分からないから。

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