どんな君も、全部好きだから。
「早坂、家どっち?」


結局一緒に帰ることになった私たち。

二人で校門を出たところで夏海くんから質問された。


「右だけど・・・夏海くんは?」

「じゃー俺も右」


まったく家の方向が違ったら一緒に帰るのは無理になるよね、と淡い期待をしていたけど、『じゃー俺も右』ってどういうこと?


「夏海くん、ほんとにお家こっちなの・・・?」


どうにも疑わしくて聞いてみるけど、


「そーゆーことでいいじゃん」


と飄々とした感じで答える夏海くん。

家、絶対同じ方向じゃないよね、これは・・・?

夏海くんも徒歩通学だということをさっき知ったのだけど、徒歩圏内で家が同じ方向だったら中学も一緒のはず。

でも私と夏海くんは同じ中学じゃない。

最悪、まったくの反対方向の可能性もあり得る。

もしかすると夏海くんをすごく遠回りさせることになるかもしれなくて、申し訳なさがこみ上げてくる。


「あの、わざわざ遠回りしてもらってごめんね」

「・・・遠回りだって言ってないけど」

「一緒に帰ってもらっても、私・・・なにも楽しい話題を提供できなくて・・・」


夏海くんの時間を無駄にしてしまっているような気がしていたたまれない気持ちになってくる。


「話題を提供て」


でも当の夏海くんは私の言い方がなぜかツボに入ったらしく、眉を下げてあははと笑い出した。

また今まで見たことのない初めての表情を見せてくれて、私はドキッとしてしまう。
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