どんな君も、全部好きだから。
「早坂はそんなん考えなくていいよ」


ひとしきり笑った後、夏海くんは頬を緩めたまま話し出す。


「早坂が思ったことそのまま喋ってよ。俺にはそれが一番嬉しい」


私が思ったこと、そのまま・・・?

面白味もない、拙い会話しかできないのに?

そんな私でいいって夏海くんは言うの?


優しい言葉に胸がきゅうっとなるのを感じながら、私は赤くなった顔を隠すように少し下を向きながら歩いた。



結局、夏海くんは私の家の前まで送ってくれた。


「送ってくれてありがとう。ごめんね、遠回り・・・」

「それはもういいから」


遠回りであること前提で話す私に少し呆れた顔をする夏海くん。


「これからも委員のとき一緒に帰らねぇ?時間遅くなるし、心配だし」

「そっそんなに遅くはないよ?まだ明るいから大丈夫だよ」


夏海くんの申し出を断ろうと、慌てて顔の前で手を振る。

二人きりで帰るのはやっぱり緊張するし、何より夏海くんを遠回りさせてしまうことが申し訳なさすぎる。


「俺と帰るのイヤ?」


心なしかシュンとした雰囲気の夏海くんに胸がチクンと痛むと同時に、なんだかすがってくるような表情をかわいいと思ってしまって・・・。

私はきゅんとしてしまった。


「い、嫌では・・・・・・ないです・・・」


夏海くんにこんなふうに言われて断れる人がいるのでしょうか・・・?


「じゃあ一緒にかえろ」

「よ、よろしくお願いします」


観念した私は夏海くんに小さく頭を下げた。

顔を上げると満足そうな顔で私を見つめている夏海くんと目が合う。
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