麻衣ロード、そのイカレた軌跡➍/赤き牙への狂おしき刃
その10
真樹子



「しかし、今日の場に北田久美を連れてくるなんて、びっくりしたわ。まあ、私はあの子には会いたかったからさ、よかったけどね」

「真樹子さん…、久美のこと、よろしく頼むよ。アイツには最後まで私に着いて来て欲しいんだ。馬美を切ってまで連れていく決断したんだし…」

伊豆の集会での”一部始終”は聞いた

決断した麻衣さんも迷ったと思うし、つらかったはずだ

「今日、あいつはここで聞いたこと、正直衝撃を受けたと思うよ。いきなりだったから。でも、久美には全部知ってもらったんだ、敢えてね。あいつ、そういうの吸収しちゃう能力があるからさ。だから、あなたのノウハウっていうか、ああ、神髄だ。それ、よく教えてやって欲しいのよ」

いやあ、参ったね

私みたいな人間に真髄とかって、ちょっと違うでしょうって…


...



「ならさ、北田はしばらく私が預かっていいかな?」

「ああ、そこまで言ってくれるんなら、久美は真樹子さんでやって欲しい。ドッグスの方は、当面、祥子が引っ張る体制を構築したいと思ってたし」

「そう。じゃあ、さっきは週一ってことだったけど、週3日は私のとこ来るよう言っといてくれます?今からいろいろ連れまわしていけば、あの子、2枚くらい皮剥けるかもね。フフフ…」

「ははは…。どうやら、真樹子さん、久美が気に入ったみたいね。いい展開だわ、私にとっては」

私たちはその後も、南玉連合の新執行部や新たなOB・OG連の動きについて、意見を交わした

そして、話のテーマはさらに広がった


...



「ああ、紅組の方なんだけど、予想より早く動きが出そうよ。脱退者は、やはり半数近くに上りそうだわ」

「そう…」

麻衣さんは、この話にはさほど反応を示さず、言葉少なだったわ

でも、私には何となくわかるかな…

紅丸有紀は麻衣さんにとって、会ったことはなくても絶対的象徴だったと思うんだ

この人、紅組には自分の抱いたイメージを壊して欲しくないっていう、ノスタルジーのようなものがあるんだろう

私たちのちょっと下の世代って、そんな目で紅組を見てるよ

最も多感な時期、心の芯を揺さぶられた、憧憬の的…

そんなもんだと思う…

しかし、私たちは紅組が構築したフレーム自体をぶっ壊す立場だ

今まさに、それに向かって猛進している

それはさあ…、複雑だよな、麻衣さんの胸中も…


...


そして…、そしてだ

黒沼の子たちから依頼されてた件、その組み立てができたんで、麻衣さんに持ち出すと、途端に目つきが一変したわ

決行も近々だし、なかなか面白いことになると思うしね

これは私にとっても肝入りの企みだけに、力入れてやるつもりさ…

へへへ…



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