魔法のいらないシンデレラ 3
「小雪ちゃん、ほらアパートに着いたよ。鍵は?」
「鍵、失くしたのー」
「そっちじゃなくて、合鍵!あるでしょ?」
「合鍵、持ってるよー。偉いでしょー」
「はいはい。偉い偉い」

山下は、ゴソゴソと鞄を探った小雪から鍵を受け取ると、玄関を開ける。

(確か、この棚の上に置くんだったな)

入ってすぐの棚の上にある、小さな小物入れに合鍵を入れると、山下は小雪を支えながらベッドに連れて行く。

もう下手に話をするのはやめて、小雪をベッドに寝かせると、山下は手帳を取り出してメモを書いた。

『鍵は玄関のドアポケットに入れておきます。 山下』

ビリッとページを破くと、ローテーブルに置く。

(さすがにこれで分かるよな)

そして部屋の電気を消し、玄関に向かう。

ドアポケットを開けると、案の定見覚えのあるキーホルダー付きの鍵が入っていた。

それを手に玄関を出ると、外から鍵をかけてまたドアポケットに入れる。

「じゃあねー…って言っても、聞こえてないか」

肩をすくめると、山下は足早に階段を下りて行った。
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