魔法のいらないシンデレラ 3
山下はため息をつくと、諦めて話題を変えた。

「ちょっと買い物行って来たんだ。そこに座って」

そう言って小雪をダイニングテーブルに座らせると、買い物袋を手に持ったままキッチンへ行く。

何やらカチャカチャと食器の音がした後、
「小雪ちゃーん、ちょっと目つぶってて」
と声をかけてきた。

なんだろうと目を閉じて待っていると、いいよ、と近くで声がして、小雪はそっと目を開けた。

「わあ!ケーキだ!」
「小雪ちゃん、今日誕生日なんでしょ?ごめんね、近くにケーキ屋さんなくて、スーパーにあった小さめのケーキだけど」
「ううん、凄く嬉しい!ありがとう、稜さん!」

こちらを見上げる笑顔の小雪に、ほんとに子どもみたいだな、と山下は、ふっと笑った。
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