魔法のいらないシンデレラ 3
3月下旬に、何度目かの『社員の生活環境整備プロジェクト』リーダーミーティングが開かれた。

小雪は、会議室に入って来た一生にすぐさま近付いて頭を下げる。

一生は、
「またどこかに行かないように、これからは山下くんが見張ってるからね」
と言って、小雪に優しく笑いかけた。

他のメンバーも、温かく小雪を受け入れてくれ、小雪は胸がいっぱいになる。

司会の早瀬がミーティングを始めようとすると、今井が手を上げた。

「その前に、今日は嬉しいニュースがあるんじゃありませんこと?まずは、叶恵ちゃんと早瀬さん」
「あ、はい。私事で恐縮ですが、お陰様で先月末、無事に息子が産まれました」

そう言って早瀬が、パソコンの画面を皆に見せる。

叶恵が手に赤ちゃんを抱いて微笑んでいた。

「皆様〜、初めまして。(みなと)と言います」

可愛いー!と皆は画面を覗き込み、手を振る。

「叶恵ちゃん、本当におめでとう!これはみんなからの花束よ。早瀬さんに持って帰ってもらうわね」

そう言って今井は、画面越しに花束を見せた。

「うわー、綺麗なお花!皆様、ありがとうございます」

早瀬も立ち上がって礼を言い、今井から花束を受け取った。
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