魔法のいらないシンデレラ 3
「瑠璃。はい、これ」

ふいに一生に声をかけられ、瑠璃は、え?と顔を向ける。

目の前に、ピンクのバラの花束が差し出されていた。

「まあっ!なんて綺麗…。一生さん、これは?」
「結婚記念日に、瑠璃への感謝の気持ちを込めて」
「え、あっ!結婚記念日…。ありがとうございます。ごめんなさい、私、何も用意してなくて…」

すみれの誕生日ばかりが頭にあり、すっかり結婚記念日の事を忘れていた。

「いいんだよ。瑠璃には、いつもたくさんの幸せをもらってる。すみれが産まれてきてくれたのも、赤ちゃんが産まれてくるのも、全部瑠璃のおかげだよ。ありがとう」
「そんな…私の方こそ、一生さんのおかげで毎日幸せでいられます。ありがとう」

見つめ合って微笑む二人に、すみれが笑いかける。

「とうさまとかあさま、なかよしね」

思わず二人は笑い出す。

「ああ、そうだよ。とうさまもかあさまも、すみれも、産まれてくる赤ちゃんも。みんなみんな、仲良しだよ」

一生が瑠璃とすみれの肩を抱きしめてそう言い、皆で笑い合った。
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