うそつきな唇に、キス
Liar / ティアー






──────瞼の裏まで、チカチカ明滅するようだった。




「……かえりたい」



手荷物検査などはされず、ただドレスコードと持たされたチケットをチェックされ、扉をくぐった瞬間、思わずそんな声が漏れていた。


人は多いし、無駄にきらびやかだし、声が錯綜して音を拾いにくいし、常に品定めをするような視線が飛び交って鬱陶しいし、情報が混濁して脳が酔ってしまいそう。


カジノだから人が多いのは覚悟していたけれど、まさかここまでとは思わなかった。



「……この際だから、2個同時に返したいんだよなあ」



たぶん、捕獲することはあまり難しくない。

……けれど、この分だと見つけるのにだいぶ苦労しそう。



「……VIPルームは、とれない、らしいし」



2階にあるVIPルームは、睿霸から追加で送られてきた情報により捜索範囲から除外される。

どうやらVIPルームは予約が必須であり、なおかつ今現在問題を起こしていない人が入れる部屋、らしい。


カジノ側が独自調査した結果で判断されるらしいから、正直まだVIPルームに入室できる可能性はゼロではないけれど、かの丽宸会を敵に回しているのだから、9割問題を起こしていると言っても過言ではないだろう。




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