うそつきな唇に、キス
それは、疑問。
もしくは、正義という一面が、悪へ塗りつぶされる瞬間だった。
「えみりさんは、昼休み開始直後に、この場所に呼び出されたのですよね?」
「え?う、うん、そうだけど、どうしたのチザキくん」
「……、黒棟と白棟が繋がっている道は、あの渡り廊下一本だけなんですよ」
流れるように、わたしと睿霸の背後へ視線を流したその子が言わんとすることを理解し、にこりと取ってつけたような、急拵えの笑みを築く。
「……つまり、昼休みの途中から来たあの人が、詰められているえみりさんに気づかないわけがないんです」
刹那、わたしを庇った女の子の瞳が、驚愕に染まる。
─────あーあ。バレちゃった。
「……どうなんですか?黒棟代表者の側近の方」
「……俺はお前に、えみりを知らないかと聞いたはずだが」
「ええ。確かに聞かれました。見なかったかと。ですからわたしは見ておりませんと伝えたはずです」
そう。わたしはあの時何も嘘をついていなかった。
ただ、足りなかっただけなのだ。
もしあの時の言葉に補足を入れるとするならば。
「……では、聞き方を変える。お前は、えみりがどこにいるか、知っていたな?」
その、的確で、かつあの時選び取るべきだった言葉に、わたしは。
「─────はい。知ってましたよ」
彼女の声を、聴きましたから。
そう、笑顔で言い放った。