うそつきな唇に、キス
ライアー / propose
ꄗ
「……すみません、睿霸。随分長い時間お待たせしてしまって」
ゆっくりと息を整えるように。
ぶつりと途切れた理性の糸を手繰り寄せるように、笑顔が輪郭という形をきちんと保つようにして、睿霸のもとへと小走りで駆け寄り頭を下げた。
「僕言ウたやん。別に気にせんデええって。それに、そんな長時間待っとらんシな」
そんなわたしに対して、睿霸はなんてことないように軽く笑って。……でも、その笑顔に、隠しきれないぎこちなさが、ほんのりと滲み出てもいて。
……どうしたんだろう。
奇妙な違和感に首を傾げていると、じゃあはよ戻ろか、と急かすように睿霸が背中を押してきた。まるで、わたしが後ろを振り返らないようにするみたいに。
……気遣い。いや、単に嫌いな人たちから距離を置きたいのかも。
睿霸らしい行動に軽く笑いそうになったところで、背中を押していた力がぴたりと止まって。
かと思えば。
「えっ、えるチゃん、血!!!!血出とル!!!!」
「へっ?」
わたしの目の前へととんでもないスピードで回り込み、ついでに鼻を押さえてきたその変わり身に、ぽかんと口を開けるしかなかった。