恋の仕方、忘れました
「…………え、あれ、充電……?充電器?ま、待ってくださいね今鞄から」
「お前はそんなんだから処女なんだって」
もう私と三度も身体を重ねているくせに、すぐ“処女”だと揶揄する彼は、至近距離でふっと鼻で笑う。
確かに私は恋愛に関しては処女同然かもしれないけれど。
でもそんなこと言われたって、充電させてって言うのはそういうことなのでは?
「充電……」
「どうせ寂しいと思ってんのは自分だけだーとかって、勝手に考えてんだろ」
「……もしかして、主任も寂しいですか?」
「当たり前。ずっとお前とこうしたかったよ」
再び唇が重なると、今度は啄むようなキスに変わった。
静かなオフィスにふたりのリップ音が響く。
それだけで顔が熱くなるのを感じた。
「主任、ここ会社です」
「うん。見回りの警備員に見つかるかもな」
そう意地悪く笑った主任は、私の顎を掬いとって離さないとでも言うように何度も唇を重ねる。
久しぶりのキスにどうすればいいのか分からず息を止めていたら段々と苦しくなって、息継ぎをするように主任の唇が離れた瞬間に口を開くと、彼はそれを待っていたかのように舌を滑り込ませた。
まさかここでそんな深いやつをすると思ってなくて、思わず主任の胸元のシャツを握る。
けれど彼は全く動じず、私の口内を舌でなぞった。
ビクリと身体が震えて、慌てて突っぱねようとするけれど、 主任は逃がしてくれない。
それどころか私の反応を愉しむかのように、私の舌を絡めとると軽く吸った。
「……しゅ、にん」
「あんま声出したらマジで警備員来るぞ」
脅しととれるような台詞を吐き出した彼は、涙目になっている私の目元を親指で優しく撫でる。
「嫌ならやめよっか?」
そしてまた彼は私に委ねる。
どうせ私の答えなんて分かってるくせに。
「……やめないで、」