恋の仕方、忘れました
苦笑をもらす私に、主任は「何だそれ」と呟きながらノンアルを飲み干す。
そのまま店員を呼ぶのかと思いきや、その目は何故か私に向けられた。
突然重なる視線は意外にも真剣で、もしかして私の心の中が読まれてるんじゃかいかと少し焦った。
「俺も聞きたいことあんだけど」
「…なんでしょう」
そんな改まって、一体何を聞き出すつもりだろう。
私の気持ちがバレてしまいそうな、答えにくい質問だったらどうしようかと、主任から出る台詞を待ちつつも内心ヒヤヒヤだった。
「あのクズのこと、本当にまだ忘れてねぇの?」
最近残業は減ったみたいだけど、と続ける主任は、今度こそ店員を呼んで飲み物を追加した。
そういえばその件は濁したままだった。
といっても、主任はまだ私が祐真さんを好きだと思ってると決めつけていたから、またこうして質問されると思わなかった。
本当はあまり答えたくはないのだけれど、これ以上引っ張るのも失礼だからと、潔く真実を告げることにした。
「いえ、もう彼のことは考えなくなったし、あれから一度も会ってません」
「…ほら、やっぱりその程度。まぁ、よかったな」
主任は私の返事に大して驚いた様子もなく、テーブルの食べ物に手を付ける。
もしかしたら主任は時間が解決したと思っているかもしれないけれど、違うんだよ、祐真さんより主任のことが気になるから彼のことを考えなくなったんだよ。
「ならもう悩みはないか?」
「……悩みは…あります。姉への罪悪感が半端ないです。胃に穴が開きそう…」
これも本当で、時間が経てば経つほど苦しくて、でも何て言い出せばいいか分からなくて、結局秘密にしたまま。
「そのお姉さんには…何も言ってねぇわな」
「言えないですね…いつかは謝ろうと思うんですけど…」
「さっさと言えよ。そしてそのクズと今すぐ別れろって伝えろ」
「…そんな酷いこと言えないですよ」
簡単に言う主任の主張はきっと正しいのだろう。
でもさすがに私からそんなこと言えないよ。