恋の仕方、忘れました



お姉ちゃんと祐真さんは付き合ってもう3年。
今まで何度も三人で食事をしたし、決して私達の仲が悪いわけではない。

寧ろとても良くしてもらっていて、彼のことを本当の兄のように信頼してる。

だから今更気を使うのもおかしな話なのかもしれないけれど…やっぱり、ね。



「え、希子ちゃん帰るの?」


「はい。お姉ちゃんには後でラインしておきま…」


「待って、待って待って」



玄関でスリッパを脱いでいる私に、祐真さんは慌てて駆け寄って来た。



「さっきお寿司買ってきたんだ。二、三人前くらいあるし、莉子とふたりじゃ食べきれないし、ていうか莉子はきっと食べないし。せっかくだから希子ちゃん食べて帰りなよ」


「お寿司…!」



なんて気の利く人なんだろう。お姉ちゃんが帰れないと知って、きっと私のために買ってきてくれたんだ。

となると、ちょっと断わりづらい。どうしよう、少し頂いて帰ろうか。
お寿司って日持ちするものじゃないし、だからといって持って帰りますと言うのもなんだか失礼だし。

でも私がいると祐真さんがのんびり出来ないんじゃ…。



スリッパを持ったまま突っ立っている私に、祐真さんは「それに…」と付け足す。



「希子ちゃん、なんだか顔が疲れてる。お酒飲んで愚痴大会しようよ」



あぁ、この人のこういうところがお兄ちゃんって感じで好き。お姉ちゃんはほんと良い人見つけたな、と心から思う。

実は普段から祐真さんやお姉ちゃんには愚痴を聞いてもらっていて、今日だって二人に愚痴を聞いてもらいたくて来たようなものだ。



「明日仕事休みでしょ?そのうち莉子も帰ってくるだろうし、遠慮せずにゆっくりしてって。ね?」


「……じゃあ、お言葉に甘えて…」



結局私は、再びスリッパを履いてリビングに戻ることになった。


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