恋をしたのはお坊様
「今日からお世話になります、大森晴日です。よろしくお願いいたします」
理事長室の入ると、私は一気に言って頭を下げた。
しかし、

「ククク」
返事の代わりに聞こえてきたのは笑い声。
さすがにおかしいと頭を上げると、

「え、ええー」
今度は私が大声を出してしまった。

「うるさいよ、晴日さん」
「だ、だって」

目の前にいるのは間違いなく隆寛さん。
なぜ?どうして?
この時点で頭の中が?でいっぱいになった。

「僕がこの園の理事長、橘隆寛です」
「え、だって、そんなこと一言も・・・」
「驚かせたくて黙っていたんだよ。それに、僕が理事長を務めるところって聞けば晴日さんが嫌がるかなって思ってね」
「嫌がるなんてことはないですけれど・・・」
もしかして隆寛さんの口利きで採用されたのかなって思ったかもしれない。

「君の採用に僕はかかわっていない。君の人柄を気に入って採用になったんだからね、誤解しないでほしい」
「はい」

それはきっと嘘ではないのだろう。
隆寛さんが公私混同なんてしない人なのは、私が一番よく知っている。
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