恋をしたのはお坊様
「お寺に行くって出かけたまま、子供達がまだ帰らないんですよ」
一緒に来ていた女性の不安そうな顔。

時刻すでに7時。
小学生の子供が遊び回る時間ではない。

「どんなことを話していたか思い出してください」
隆寛さんにも言われ、私は記憶をたどってみる。

「東京の話を聞かせてほしいって言われて、少し話しました」
「それから?」
「最初は東京ならどこに行きたいかって盛り上がっていたけれど、そのうち春休みに『秘密基地を作りたいね』って誰かが言って、みんなも賛成して、今度裏山に行ってみようって話になっていました」
「「裏山?」」
大人たちの声が重なる。

「子供たちが裏山に入るって相談しているのを、あんたは黙って聞いていたのかね」
「・・・」
何かまずかったのだろうか?

「晴日さんはこの土地のことがわからないから、雪の残った裏山が危険なことがわからなかったんですよ」
「それにしたって」

隆寛さんはかばってくれるけれど、少し冷静に考えればわかったこと。
だって、私自身がつい最近雪の裏山で遭難しかけたんだから。

「とにかく、人手を集めて裏山に行ってみよう」

隆寛さんも含め大人たちはすぐに出て行った。
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