先生の愛が激重すぎる件
私はこのことを誰かに聞いてほしくてたまらなかったのだけれど、夜勤明けにランチに付き合わせてまで話す内容ではなかったのかもしれないと反省する。

「……聞きたくなかったよね、こんな話。ごめんね」

「いえ。話せば楽になるんでしたら付き合いますよ」

「……ありがとう」

「ところで久保さんは今どこに住んでるんですか?」

 豚のバラ肉を鉄板に乗せながら野原さんは続ける。

「たしか一緒に暮らしてましたよね、先生と」

「ああ……うん。それがまだ先生のマンションに住んでるの。荒木先生は病院に寝泊まりしてる状態だから部屋が見つかるまではいていいって言ってくれたの」

 本当にありがたい申し出だったとはいえ、私はすぐにでも出ていかなければならない立場。それなのに先生に甘えてまだ住まわせてもらっているのは我ながら情けない。

「そうなんですね。早く部屋見つかるといいですね」

「本当に。早く見つけないと」

 あれこれ言ってこないのが野原さんのいいところだ。別れた理由も聞いてこないし、憐れんだりもしない。

「というわけで、食べようか。聞いてくれてありがとうね」

 私は焼き色のついたお肉と特製の辛みそをサンチュに巻いて口に運んだ。お腹もすいてていて味もとてもおいしいはずなのに、どうしてだろう……あまり食べたいと思えない。

「久保さん? どうかしました?」

「あ、ううん。なんでもない……」

幸い、野原さんがたくさん食べてくれたので料理を残すことはなくてほっとする。締めのデザートまで二人分彼女の胃袋に治まった。

「本当いにいいんですか? おごってもらっちゃって……」

「いいのいいの。今日は私が誘ったんだし」

 会計を済ませて店を出ると買い物をして帰るという彼女と別れた。電車に乗り最寄り駅で降りると、マンション近くの不動産屋の前で足を止めた。

「分かってはいるけど……」

 敷金と礼金と二か月分の家賃と、初期費用を合わせたらかなりの出費だ。

先生と暮らすようになって実家への仕送りを増やしていたのであまり貯金もできていなかった。

この辺りで部屋を探すのは諦めて、郊外へ引っ越すべきなのかもしれない。通勤時間はかかっても致し方ないだろう。

「明日美?」

 そう呼ばれて振り返ると、鷹藤さんとヴェガの姿があった。

「鷹藤さん。ヴェガも」

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