サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)

夕方の混む時間を避けるように、十四時過ぎに近くのスーパーへと向かう。
久しぶりに彼のために夕食を作るためだ。

彼の好きなビーフシチューと生ハムのサラダ、それとサーモンをウォッカに漬けマリネを献立に考え、売り場をぐるりと一周。
テナントに入っているパン屋さんでエッグボードも購入して。
その他にも色々と見繕って、両手にパンパンに膨れ上がったエコバッグを手にしてマンションへと帰宅する。

彼のために通い始めた料理教室で教わったレシピ。
元々仕事で刃物を扱うため、自宅では料理を一切しなかったのだが、彼のために少しずつ花嫁修業を積んでいる。

今では結構レパートリーも増えて、やる気と時間さえあれば、ある程度のものなら作れるようになった。
とはいえ、作るのはあまり好きじゃない。
だから、手際が悪いのは致し方ないというか……。

縫合したり、メスさばきなら自信があるが、どうも『待つ』が苦手で。
ぐつぐつと煮えるのをじっと待ったり、焦げ目を付けるためにじっと我慢するのが耐えられなくて。
ついつい蓋を開けて掻き混ぜてしまうし、フライ返しでひっくり返してしまう。

直ぐに結果を求めてしまうのは、職業柄。
常に危険や不安を取り除こうと、安心、安定を求めてしまう。


沸々と煮え始めた鍋の隣りで、翌日の朝食用のスープを作っていた、その時。
エプロンのポケットの中から無機質な着信音が鳴り響いた。

「もうっ!!」

職場からの連絡だと一瞬で分かる。
だって、郁さんならお気に入りの『SëI』曲だし、友人からならば初期搭載されてるメロディーだから。

< 11 / 182 >

この作品をシェア

pagetop