サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
ぺろりと一個分の桃を食べ終えた頃に意識が段々とはっきりして来た。
医師なのに、低血糖や脱水症状に陥るって…。
「しっかり水分も摂って」
「………ん」
水の入ったグラスが手渡された。
至れり尽くせりだ。
「俺にも、……水くれ」
「……??……っ」
リビングのセンターテーブルの上を見てもグラスらしきものが見当たらない。
思わず彼に視線をやると、流し目のような色気のある視線を私の手元に落とした。
私の水が欲しいらしい。
ストローがあるわけでもなく、手を差し出すわけでもなく……。
これって、やっぱり……そういうこと、だよね?
三分の一ほど残っているグラスの水を見つめ、不必要に顔が火照り出す。
こういう時に限って意識がしっかりとある。
酔ってたりしないと恥ずかしくて出来ないのに。
彼の意図とする行為を躊躇していると、私の手からグラスが取り上げられ、彼は煽るようにしてそれを口に含む。
色気のある薄い唇が僅かに濡れたのを見つめていた、次の瞬間。
彼の手が私の後ろ首を掴み、そのまま彼へと引き寄せられて。
ハッと思った時には、彼の柔らかい唇が私の唇に重なった。
そして、容赦なく流れ込んで来る――彼の口の中の水が。
「んっ……っンッ…」
口移しされた水をごくりと飲み込むと、彼は妖美な視線を孕ませ、再び唇を重ねた。
「んッふっ……」
熱い舌先が歯列を割って滑り込んで来て、容赦なく舌が吸い絡め取られる。
少し強引に後ろ首を掴んでいた手が、優しく後頭部を支えるように移動すると、ふわっとした感覚の後に背中がソファーに辿り着いた。