サイコな機長の偏愛生活

客室乗務員(CA)からの搭乗完了報告を受け、機体のドアが閉められる。

奥菜はデリバリーから許可を得た後、空港内の地上移動の管制塔(グランド)にスポットからの移動許可(滑走路(ランウェイ)のタキシングルートの指定)を仰いだ。

この時、機体はトーイングカー(ランウェイへ向かう為に後進させるための補助車両)によって、機首を旋回させるようにして移動している。

羽田への復路は悪天候が予想されるため、操縦担当(PF)が財前、計器類の監視、無線交信担当(PM)が奥菜である。
乗客が搭乗開始してから完全に上空で高度を確保するまでの間、操縦士の業務は目まぐるしい。

エンジンをスタートさせるにも、機体を移動させるにも許可が必要で。
管制官とのやり取りは一字一句が管制承認とされるため、必ず復唱しなければならない。
羽田空港のように沢山の航空会社が離発着する空港の管制官とのやり取りは、シャワーのように何度も何度も送り続けることもよくある。


トーイングカーが離脱し、財前の操縦により機体が指定された誘導路へと自力走行(タキシング)している間に、奥菜は管制塔(タワー)へと離陸の許可を仰ぐ。

幸い比較的離発着の少ない長崎空港では、同じ時間帯に離陸許可を待機している機体は無い。

管制官から指示されたポイントへと進む。
機体は滑走路へと進入し、離陸ポイント(離陸出発地点)へと進ませながら、財前はランディングライト(前輪と翼の付け根に付いている白色のライト)とストロボライト(翼の先端や胴体の後部でピカッピカッと光る白色のライト)を点灯させる。


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