サイコな機長の偏愛生活

管『ASJ322. Wind 300 at 5, Runway2 Cleared for Takeoff.』
奥「Wind 300 at 5, Runway2 Cleared for Takeoff, ASJ322.」

既に太い白線の離陸開始ポイントに到着している機体。
タワーからテイクオフクリアランス(離陸許可)が下り、財前は右席(副操縦士の席)に座る奥菜にアイコンタクトを取った。

財「Stabilize」(ブレーキング状態でエンジン出力を安定させること)

足下のブレーキを踏んだ状態で、スロットルレバーを少しだけ前方へ押し上げる。

エンジン計器のパラメーターが安定していることを確認した財前。
TOGAボタンを押し、同時にブレーキをリリースすると、機体がゆっくりと動き出す。
(TOGA:Take off and Go aroundの略、離陸推力やゴーアラウンド推力を使用する時の用語)

財前はエンジン計器を目視し、エンジン推力が離陸推力まで達したことを確認。

財「Thrust(出力) set」

出力を上げた機体は、体に重力を感じるほどに速度を上げ、滑走路から緩やかに浮上し、離陸した。

長崎空港を定刻より五分ほど遅れ、十七時五十分に出発したボーイングB777-300 ASJ322の機体は、乗員十一名、乗客三百六十一名を乗せ、既に黄昏色から濃紺の世界へと変わり始めていた空へと羽ばたいてゆく。


財前が操縦しているボーイングB777-300は旅客機の中でも大型機で、同じタイプの最新機のボーイング787も同じ操縦資格で操縦することが出来る。

操縦士(パイロット)と言っても、製造メーカーが違えば搭載されている装備も多少変わり、機体の大きさやデジタル化の有無など、多様な条件を把握するために、操縦資格も複数ある。

自動車の免許で普通車と大型車、特殊車両などがあるように、航空機にも多様な操縦資格が存在する。
パイロットになったからと、どの飛行機でも操縦できるわけではない。

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