サイコな機長の偏愛生活

「『ダメ?』と言われても……。彼以外と食事は……ちょっとね」
「ランチは二人で食べたりしてるじゃないですか」
「あっ、あれは……、食堂には他にも人がいるじゃない」
「……レストランとか寿司屋にも他に人がいますよ?」

何、このグイグイ来る感じ。
口説くわけじゃないとか、取って喰ったりしないという割には、ガンガンに攻めて来るじゃない。

「それでも、やっぱりごめんね。彼と一緒に住んでて、ご飯作らないとだから」

郁さんを差し置いて、他の男性と食事になんて行けない。
というより、元宮くんと食事に行く時間があるなら、郁さんと一緒に食事をしたいし、顔が見たい。

「へぇ~。同棲してるんですね」
「別にいいでしょ。っていうか、元宮くんには関係ないし」
「まぁ、そうですけど」

彼から視線をパソコンに戻し、会話を終わらせようとした、次の瞬間。

「っんッ?!!」

体がぐらっと左へと方向転換した。
私のキャスター付き椅子の背凭れを掴んで、彼が向きを変えたようで。

「ちょっと、……見せて貰ってもいいですか?」
「ッ?!!」

ひんやりと冷たい彼の指先がスクラブの襟部分からほんの少し差し込まれ、プラチナのチェーンに通してる指輪がスクラブの中から取り出された。

「うっわぁ~っ、めっちゃ高そうな指輪!前屈みになった時に見えて、凄く気になってたんですよね~」

高そうなんじゃなくて、高い指輪よ!!

「ちょっともういいでしょ!勝手に触らないでっ!」

彼の手元から取り返して、スクラブの中に素早く戻す。

オペの時は事前に更衣室のロッカーに置いているけれど、それ以外の時は首に下げるか、指に嵌めるようにしている。
彼とのすれ違い生活も、これがあるから乗り切れてるようなものだ。

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