サイコな機長の偏愛生活

「とりあえず、今日のところは帰ります」
「今日だけじゃなくて、今後も一緒にご飯食べに行くことないからっ!」
「あ~はいはい。お先に失礼しま~す」

あっけらかんとした感じで、彼は医局を後にした。
そんな彼に『お疲れさま』を言う気分にはどうしてもなれなかった。

爽やかスポーツマン風好青年かと思ってたけど、結構手練れてる感満載だよ。

**

二十時少し前に帰宅し、急いで浴室へと向かう。

着ている服を脱ぎ捨て、熱めのシャワーを浴びる。
首からかけているネックレスと指輪をボディーソープで念入りに洗って。

別に彼にドキッとしたとか、きゅんとしたとかではない。
だけど、あんなやり取り自体が郁さんを裏切っているみたいで気が引けた。

お風呂から出て髪を乾かしていると、コンコンコンとドアが三回ノックされた。

「ただいま」
「お帰りなさいっ」
「さっき帰って来たところ?」
「あ、はい」
「じゃあ、外に食べに行こうか」
「え?」
「もう結構な時間だし、これから作るのは…」
「はいっ」
「じゃあ、シャワー浴びて着替えて来るから」
「はぁ~い、私も準備しますね」

彼は寝室にあるシャワールームへと向かって行った。

髪を乾かし、再びメイクを施す。
バスローブを羽織った私は、着替えるためにウォークインクローゼットへと。

毎月のように彼からプレゼントされる服が並ぶ部屋。
宝箱の中みたいで、見てるだけでワクワクする。

上品なものから清楚なもの、色気のあるデザインのものからスタイリッシュなものまで。
どれにしようか悩んでいると、ふわりと長い腕に包まれた。

「今日はどういうコンセプト?」
「……郁さんを翻弄するいい女です」
「フッ、……じゃあ、これにして」
「……はいっ」

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